介護施設で外国人の雇用は?
介護分野においては、「特定活動(EPA介護士)」「技能実習」「介護」「特定技能(介護分野)」「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザがあります。取得要件や在留期間が異なっておりますので、掻い摘んでそれぞれご紹介させていただきます。
就労制限のない外国人
フルタイムで雇用が可能
・日本人の配偶者等
・特別永住者
・永住者
・永住者の配偶者等
・定住者
上記の5つのビザは、身分系のビザです。労働基準法や最低賃金のルール等を遵守いただければ日本人と同様に雇用が可能です。
週に28以内であれば雇用が可能
・留学生
・家族滞在
上記の2つのビザは、原則として働くことができません。「資格外活動許可」を申請することで、週28時間以内であれば働くことができます。なお、留学生については、学校の長期休暇期間中(夏休み等)は、1日8時間までのアルバイトが可能です。
ワーキングホリデーで滞在中の外国人
現在、日本国内にはワーキングホリデーで来日している外国人が約15,000人います。ワーキングホリデーの外国人も介護施設で働くことが可能です。フルタイムでの就労も可能です。最近では、韓国、台湾、香港からのワーキングホリデー外国人が多くなっています。
EPA介護士
EPA介護士とは、日本とインドネシア、フィリピン及びベトナムとの間で締結された協定に基づき、日本の介護士施設で働く外国人のことです。インドネシア人・フィリピン人・ベトナム人看護師・介護福祉士候補者として選ばれた外国人が対象となります。
EPA受入施設となるためには、国際厚生事業団(JICWELS)に求人申請し、厳しい審査を経て、受け入れが可能となります。
EPA受入施設となるための主な要件は下記です。
- 受入施設に関する要件(常勤介護職員の4割以上が介護福祉士の資格を有する職員であることなど)
- 研修に関する要件
- 雇用契約の要件
- EPA介護士の住居に関する要件
- 国際厚生事業団、出入国在留管理局等への報告に関する要件
- 国際厚生事業団の巡回訪問への協力
- 国際厚生事業団の指導に対する報告、改善に関する要件
介護ビザ
介護福祉士の国家試験に合格した外国人が対象となる就労ビザです。
なお、2017年から2021年末までに介護福祉系専門学校を卒業した外国人の場合、介護福祉士の筆記試験に合格できなくても、卒業後5年間は介護ビザが許可され、介護施設で働くことが可能です。
技能実習ビザ
2017年より技能実習の対象業種に介護が加わりました。まだ運用開始して数年ですが、確実に導入企業が増えています。他の業種との大きな違いは、日本語能力が一定水準以上であることが必要であることです。具体的には、技能実習1号(1年目)で日本語能力試験N4合格、技能実習2号(2年目)で、N3に合格していることが必要です。
特定技能ビザ
特定技能ビザ取得の本人の要件としては、介護技能評価試験と介護日本語評価試験に合格することです。
《介護技能評価試験・介護日本語評価試験について》
介護技能評価試験 | 介護日本語評価試験 | |
問題数・試験時間・ 試験科目 | 全45問 60分 (学科試験:40問) ・介護の基本(10問) ・こころとからだのしくみ(6問) ・コミュニケーション技術(4問) ・生活支援技術(20問) (実技試験:5問) ・判断等試験等の形式による実技試験課題を出題 ►出題基準 | 全15問 30分 ・介護のことば(5問) ・介護の会話・声かけ(5問) ・介護の文書(5問) |
実施方法 | コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式 | |
サンプル問題 | ►介護技能評価試験 | ►介護日本語評価試験 |
受験手数料 | 1,000円程度 | 1,000円程度 |
試験結果の通知 | 試験終了後、試験会場のコンピュータ画面上で試験結果を表示。 試験実施後5営業日以内を目途に、専用ウェブサイトにおいて、 受験者が受験者名、試験名、試験日、顔写真、総合スコア、 合否などの情報をスコアレポートとして取得可能。 ※合格基準:問題の総得点の60%以上 |
試験概要はこちら
技術・人文知識・国際業務ビザ
介護施設での技人国ビザの取得は、簡単ではありません。一度失敗すると、今後の外国人採用にもマイナス影響がありますので、ビザ申請の際には、専門家にご相談ください。日本の大学(経済・商業等)卒業者で、職務が経理等であれば可能性があります。他、福祉系大学を卒業し健康維持の管理指導等であれば許可可能性があります。
〜最後に〜
介護ビザの外国人採用をお考えの方
介護ビザを持っている外国人は主に、日本にある介護系専門学校の卒業者です。現時点で、介護ビザの保有者は約1300人となっています。これまでは、介護士養成機関を卒業することがビザ取得要件でしたが、2020年に実務経験ルートも認められたため、今後は介護ビザを持つ外国人が増えると予想されています。
介護ビザで外国人を採用したい場合、介護系専門学校と提携するとよいでしょう。最近では、奨学金スキームを使って提携するケースが増えているようです。奨学金スキームとは、介護施設が、専門学校の学費を奨学金として支給してあげ、その代わりに在学中は(放課後や土日、夏休みなど)、施設でアルバイトしてもらうというスキームです。
筆者は過去に奨学金スキームを活用されている施設を一度取材させていただいたことがあります。担当者曰く、「一度仕組みを作ってしまえば、3年計画ではあるが、毎年4月に2~3人の採用が可能。しかも、これまでアルバイトしてきた方。能力や性格もよく分かっている。コストかかるが、非常に助かります」とのことでした。
技能実習生の外国人採用をお考えの方
発展途上国から人材を受入れ、原則3年間、日本の介護施設で実習、働いてもらうという制度です。介護の技能実習生は、累計で約3000人となっています。
技能実習生のメリットは、3年間、確実に雇用できること。転職ができない仕組みになっているからです。
デメリットとしてはコストがかかる事です。技能実習生を受け入れるためには、来日のための渡航費、来日後の法定教育費などがかかります。採用時にかかる費用の相場は、1人あたり30万円~、毎月の管理費として1人あたり2.5~5万円(年間30~60万円)かかります。
技能実習生を採用したい場合、監理団体という人材あっせん機関を経由することになりますので、介護に強く、サポートが充実している監理団体をお勧めします。
特定技能外国人の採用をお考えの方
政府が一番増やそうとしている制度です。2024年までに、6万人(年間12000人)まで増やそうとしています。現時点では、まだ約2300人です。メリットとしては対象者は介護技能評価試験に合格しているため、介護の基礎知識があります。
現地面接、視察をお考えの方
技能実習生や特定技能外国人については、現地面接をお勧めします。交通費や宿泊費はかかりますが、現地では、現地の送り出し機関(人材会社)が無料でアテンドしてくれます。現地人材会社の介護トレーニング施設、日本語学校を見学し、当該国の外国人がどんな暮らしをしているのか把握することは今後の雇用管理にも大いに役立つと思います。