特定技能ビザ

ビザ取得に関する手続き

2019年4月に、在留資格「特定技能ビザ」が創設され、これまで原則禁止されていた職種で外国人を雇用できるようになりました。ただ、「制度が複雑すぎる」、「従来の技能実習制度の方が使いやすい」という声も聞かれます。本稿では、この特定技能ビザの基本と常識、現時点での活用状況などをまとめました。

特定技能ビザって何?

外国人が日本で働くためには、原則として就労ビザ(正確には、就労可能な在留資格)を取る必要があります。特定技能ビザとは、この就労ビザの一つです。他の就労ビザとの大きな違いは、深刻な人手不足という課題を抱える14業種に限定されていること、現業労働が認められていることなどです。

また、深刻な人手不足への対応策として創設されたため、2019年~2024年までの5年間限定の制度となっています。この5年間の間に他の就労ビザへの変更も可能です。

今どれくらいの特定技能外国人が日本で働いているの?

2020年6月に、出入国在留管理局が発表した統計によると、特定技能ビザを持つ外国人の数は、5,950人です。コロナの影響もあり、当初の目標(5年間で345,000人)と比べると少ないですが、確実に少しずつ増えているという印象です。

業種別では、飲食料品製造(食品工場等)が2,094人と一番多く、次いで、農業(930人)、外食(607人)、産業機械製造業(561人)、素形材産業(537人)、建設業(374人)となっています。

逆に少ない業種は、航空(2名)、宿泊(39名)です。コロナの影響を直接受けた業種ですね。

国別でみると、ベトナム人、中国人、フィリピン人の順に数が多くなっています。特に、ベトナム人は、全体の58.8%を占めます。

特定技能の在留期間

「特定技能」には1、2号があり、それぞれの在留期限は次のとおり。

どんな業種で活用できるの?

現時点では、以下の14職種が対象です。

なお、特定技能ビザ2号の対象業種(永続雇用できる業種)は、建設・造船のみとなっています。これ以外の業種は、5年間限定のビザとなります。

複雑な制度って聞いたけれど、何が複雑なの?

一言で説明することは難しく、いろいろな意味で複雑です。まず、特定技能外国人を受け入れる企業側の要件がかなり複雑です。会社の業績だけでなく、社会保険加入状況、過去の会社都合・自己都合退職者の人数(日本人従業員含む)なども審査対象となります。また、業種によっては、追加される要件もあります。

また、一言で14業種といっても、該当する職種とそうでない職種があります。例えば、産業機械製造業の場合、18の職種に分かれており、それぞれに要件が少しずつ異なります。自社の業務がそのどれに該当するのか判断するだけでも大変な作業になるケースもあるようです。

そして、入社後も、3ヶ月毎に、数種類の報告書を行政庁(出入国在留管理局など)に提出しなければならないというルールも制度を複雑にしています。ただ、これについては、簡単に報告できるツールも開発されています。

能実習制度と比べて何が違うの?

大きな違いとしては、転職が可能な否かという点です。

技能実習制度は、期間内(通常3年間)は特定の企業のみでの就労でした。ですから、退社した場合、帰国ということになります。

一方、特定技能ビザは、同職種であれば転職自由です。また、他の在留資格への変更が可能。例えば、介護の特定技能外国人が介護福祉士試験に合格した場合、介護ビザへの変更が可能です。

特定技能ビザを取るための本人側の条件は?

下記のいずれかに該当することが条件です。

①過去に技能実習生として来日し、3年間の技能実習期間を問題なく過ごした外国人

②業種毎に実施されている特定技能評価試験に合格すること。加えて日本語能力検定N4相当試験に合格していること(介護の場合、介護日本語評価試験合格も必要)。

特定技能評価試験って難しいの?

平均合格率は、58%(2020年2月現在)です。業種にもよりますが、ほとんどの試験は、正誤式もしくは4択で実施されます。宿泊業などは簡単な実技試験(接客対応)もあります。記述問題は原則ありません。試験時間は60分程度ですが、15分程度で試験会場を出てくる受験者も多いです。つまり、きちんと準備しておけば15分程度で解ける問題です。合格率から見ても、落とすための試験ではなく、勉強すれば受かる試験ですね。

特定技能所属機関とは?

入管法上では、特定技能ビザで来日する外国人を雇用する日本の会社のことを「特定技能所属機関」という呼称で呼びます。

特定技能所属機関は、原則、業種別に設けられている協議会に加盟する義務があります

この協議会は特定技能ビザで働く外国人を保護する目的で設置されているものであり、そのメンバーには特定技能所属機関、分野所轄省庁(外食産業であれば農林水産省)、関係省庁(厚生労働省や法務省など)、業界団体、その他任意で参加する有識者が含まれています。
この協議会は、特定技能ビザ制度の制度趣旨や優良事例の周知、法令遵守の啓発や産業構造・経済情勢などの変化に関する情報の把握・分析、外国人の受け入れを適性かつ潤滑に行うために必要な情報・課題等の共有や協議といった役割を担っています。

受入れ機関(特定技能所属機関)自体が満たすべき基準

先述の通り特定技能所属機関は業種別に設けられた協議会への加盟義務がありますが、それに加えて特定技能所属機関として認められるための要件として以下の基準が設けられています。・ 労働,社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
・ 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
・ 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
・ 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がない等)に該当しないこと
・ 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
・ 中長期在留者の受入れ又は管理を適正に行った実績があり,かつ,役職員の中から,支援責任者及び支援担当者を選任していること(兼任可)等(*)
・ 外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していること(*)
・ 支援責任者等が欠格事由に該当しないこと(*) など
(注)上記のうち*を付した基準は,登録支援機関に支援を全部委託する場合には不要

引用:法務省「新たな外国人材受入れに関する政省令の骨子」
http://www.moj.go.jp/content/001288453.pdf

受入れ機関が外国人を受け入れるための基準

①外国人と結ぶ雇用契約(特定技能雇用契約)が適切であること(例:報酬額が日本人と同等以上)
②受入れ機関自体が適切であること(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
③外国人を支援する体制があること(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
④外国人を支援する計画が適切であること(1号特定技能外国人に対する支援について 法務省PDF)

特定技能所属機関の義務

①外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること(例:報酬を適切に支払う)
②外国人への支援を適切に実施すること
→ 支援については、登録支援機関に委託も可。登録支援機関に全部委託すれば上記③の基準を満たす。
③出入国在留管理庁への各種届出を行うこと
(注)①〜③を怠ると外国人を受け入れられなくなるほか、出入国在留管理庁から指導、改善命令等を受けることがあります。

特定技能外国人は増えていくの?

政府としては、特定技能外国人を増やしたいという方針を打ち出しています。出入国在留管理局では、特定技能総合支援サイト(https://www.ssw.go.jp/)を立ち上げ、特定技能ビザに関する情報発信や企業とのマッチングイベントなどを開催しています。基本、無料で利用できるものばかりです。特定技能外国人は、元技能実習生や元留学生が多く、ある程度の日本語力とその業種についての基礎知識を持ち合わせています。元技能実習生については、3年以上、日本で働いたという実績もあります。こうした良い面が正しく評価され、今後、特定技能外国人が少しずつ増えていくとよいのではないかと思います。

特定技能ビザ よくある質問

技能検定3級に未合格である元技能実習生の場合、特定技能ビザを取得できますか?

技能実習3年修了者は、技能検定3級に未合格であっても、元勤務先からの就労証明書などがあれば、特定技能ビザを申請できます。ただし、技能実習中に失踪した外国人は該当しません。

日本語学校や専門学校を中途退学して、この特定技能ビザに変更することは可能ですか?

要件を満たせば可能です。例えば、元技能実習生(3年間の技能実習を修了した外国人)が、現在通っている学校を退学して、特定技能ビザに変更することは可能です。ただし、特定技能ビザから他の就労ビザへの変更は、非常に難しいため、将来設計をよく考えてから決断ください。

技能実習ビザから特定技能ビザに変更することは可能ですか?

できません。技能実習の期間を満了(3年間修了)してから、特定技能ビザへの変更をしてください。

特定技能ビザの外国人を雇用すれば助成金がもらえますか?

特定技能ビザは5年間の就労後、帰国することが前提のビザであるため、キャリアアップ助成金は対象となりません。ただし、人材開発助成金の対象となります。特定技能ビザの外国人を受け入れる際、マニュアル作成や研修等を行うのでしたら、人材開発助成金が支給される可能性があります。当事務所では、人材開発助成金に強い社会保険労務士と提携して研修を行っております。詳しくはお問い合わせください。

難民申請中の外国人でも特定技能ビザを申請できますか?

現在、難民申請中の外国人は、特定技能ビザに変更することはできません。過去に難民申請をしたことのある外国人については、その問題(難民である状況)が完全に解決しているのであれば申請できますが、厳しく審査される傾向にあります。

特定技能人材の採用をお考えの皆様へ

今まで外国人材を雇用された経験のない企業様も多いのではないでしょうか。

・日本語でのコミュニケーションに問題はないか?
・どのような仕事を任せられるのか?
・どの国の人材が良いのか?
・雇用するにあたり何から始めればよいのか?

…など、様々不安や疑問があるかと思います。お気軽にご相談ください。

Translate »
PAGE TOP